『暑いからアルコールを飲む』という大人の仲間入り【短編】

『暑いからアルコールを飲む』という大人の仲間入り【短編】

「ああ、俺も大人になったんだなぁ」


カラッと暑い日中と少し涼しさを感じる夜。
ふたつの雰囲気が混在するこの季節は、夕方がちょうどよく心地よい。

最寄り駅を通ると、高校生とスーツを着た社会人とすれ違う。
大学生は電車をつかうから1時間に2回だけ、駅が私服のひとであふれる。

ぼくはいつも決まったお店で買い物をしてから帰路につく。
決まったお店といっても、田舎だから選択肢が4つくらいしかない。
だから、毎日同じ商品。悩まなくて済むから、楽だ。
買うものも、カット野菜、お肉、牛乳、チーズ、イチゴ、トマトジュースでほぼ固定されている。
置いてある場所がわかっているから、脇目も振らずに陳列された場所に直行する。
カゴも使わずにそのまま手で持ってレジに向かう。
「見習い中」という札をレジスターに掲げた若いひとがカウントしてくれる。
そのとき、レジのモニターで未成年確認ボタンを押すようになった。
アルコールを買うようになったからだ。

最近ふと、コークハイが飲みたくなる。
買ったものを入れたエコバッグを左手に、右手で小さい缶のコークハイを飲みながら歩いて帰る。
20分くらいかかる帰路では夕日が沈みかかる。
住宅街の裏道を歩くには暗く、対向車が延々とハイビームでライトアップしてくる。
眩しいポーズをしてもお構いなしに照らしてくれるので、暗い時間は裏道を歩かず、遠回りになるが大通りの歩道を歩いて帰る。
大通りは道幅が広いので、空が広く見える。

仕事終わりにアルコールを飲みながら帰ると、1日が楽しく終わった気になる。

家に帰ってから、部屋のなかのハンモックに腰をかけるとそのまま寝ている。
スースーするシャンプーとボディーソープでぬるま湯シャワーを浴びて、そのまま10時前にベッドに移動する。

数年前までは自発的にアルコールを飲むことはなかった。
アルコールを買うことも、「暑いから、アルコールが飲みたい」という思考回路さえなかった。


ああ、俺もおとなになったんだなぁ

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Chaito

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