【知ってる?】君が代の時間スケール:さざれ石が巌となる=数億年 【人類・地質・気候】
君が代は
千代に八千代に
さざれ石の巌となりて
苔のむすまで
歌いはするものの、あらためて意味を考えることはありませんでした。
国歌を歌ったときに、時間的なスケールが気になったので調べてみました。
君が代は
千代に八千代に 【人類スケール】
さざれ石の巌となりて 【地質スケール】
苔のむすまで 【気候変動スケール】
目次 Índice
千代は3万年、八千代は24万年
君が代は、千代にも八千代にも続く。
日本の人は、八百屋とか、八百万の神とか、八岐大蛇とか、8が好きみたいだ。
どうして、昔の人は8という数字に、「たくさんの~~」という意味を持たせるのか不思議だ。
(「八百長」は上の例とは違って、八百屋の長兵衛がお客に対して囲碁の試合でわざと負けて、気持ちよくよりたくさんの商品を買ってもらうようにしたからついたそうです。
なので、たくさんの長兵衛ではありませn。)
一般的に、一世代は30年とされているので、
千代は、30,000年。
八千代は、240,000年。
これは、「たくさんの年月」と訳すことができそうだ。
ちなみに、西暦1年〜2019年の間には、一世代30年間とすると67.3代存在する。
天皇は、神武天皇から始まり、現在の今上天皇まで歴代126代いる。
さざれ石は、小石のこと
さざれ石は、常にひらがなで記載されているのでイメージしにくいが、「細石」とつづる。
細かな石のことだ。
辞書で引くと、
【細石 =小さな石、小石】
と出てくる。
なんら特別な石ではない。
巌(いわお)は、大きな岩のこと
では、この小石が巌(いわお)となるというのは、どういうことなのか。
巌(いわお)は聞き慣れない言葉ですが、実は、巌は「いわ」とも読みます。
「いわ」と打って、予測変換を追っていくと、巌が出てきます。
【巌(いわお)=岩石のうち、大きなもの、特に表面がなめらかでなく、ごつごつしているもの】
いわゆる、石がたくさん埋まっているような大きな岩ですね。
「岩が小石になる」のではなく、「小石が岩になる」という凄まじさ
ぼくは「さざれ石の巌となりて」を真面目に考えるまで、
「岩が小石になる行程」を想像していた。
たしかに、「さざれ石が巌となる」と唄っているのだけど、イメージは逆だった。
だって、小石が岩になるんだよ?
岩が川に流れて、ほかの石にぶつかる内に摩耗して、角が取れて小さくなっていく。
これが、大きな岩が小さな小石になっていく、(それでも)果てしない行程だ。
たぶん、この「大きな岩→小石」の行程だけでも、何百年と時間がかかるはずだ。
でも、実際は違った。
「小石→大きな岩」なのだ。
小石が大きな岩になるらしいのだ。
この行程のスケール感、みなさん考えたことあります?
「そのあたりを転がっている小石は、いつ大きな岩になるのだろう?」なんて、純粋な小学生でも考えつきませんよ。
国歌「君が代」に詠まれているさざれ石は、日本の七高山、伊吹山のふもとにあり、学名を石灰質角礫岩と言います。これは石灰石が長い年月の間に雨水で溶解され、そのとき生じた粘着力の強い乳状液(鍾乳石と同質)が次第に小石を凝固して、だんだん巨石となり、河川の浸食作用により地表に露出し、苔むしたたものです。
岐阜県さざれ石公園 https://www.town.ibigawa.lg.jp/kankoujyouhou/0000006085.html
石灰質角礫岩(せっかいしつかくれきがん)についての説明を見れば、詳しい生成過程がわかります。
岩石鉱物詳細図鑑:https://planet-scope.info/rocks/calcareous_breccia.html
石灰質角礫岩は、石灰岩中の炭酸塩鉱物が風雨によって自然浸食され、溶け出した成分がコンクリートのようにかたまる。そうなると、溶け固まったことで角礫(小石のようなもの)が集合体になる。
(石灰岩が弱酸性の雨水に浸食されると炭酸カルシウムとなり、岩の間隙に流れ落ち行く。その間隙中で再び固化すると、それがセメントの役割となり、小石同士がくっついていく)
そんな感じみたい
石灰質角礫岩(さざれ石の巌)の形成には、2~3億年かかる?
国歌の「さざれ石」が、岩石名【石灰質角礫岩】であることから、この岩石の形成年数を調べてみた。
そのところ、京都の石灰質角礫岩は、三畳紀・石炭紀・ペルム紀に形成され始めたようだ。
http://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/geo/db/soi0082.html
これ、聞き慣れない地質年代が書かれているが、
三畳紀 =約2億~約2億5千年前
ペルム紀 =約2億5千年前~約3億
石炭紀 =約3億~約3億6千年前 である。
2億~3億年前の話をしているわけだ。
地質年代は、鉱物中の放射線を分析する(放射年代測定)ことで特定できるようになった。
この京都の研究も、同様に測定して、地質年代を出したのだろう。
一般論的に、「石灰質角礫岩」の形成にどのくらいの年月がかかるのかはわからなかったが、
京都のさざれ石は約2~3億年前の岩石である。
なので、さざれ石が巌となるのにかかる年月がどのくらいなのかは正確にはわからない。
でも、「千代に八千代に」よりも長い年月であることは確かだ。
なぜなら、人類学的なスケールではなく、地質学的なスケールだから。
(ちなみに、アンモナイトは約4億前~7千年前の間を生きていたとされているので、石灰質角礫岩(さざれ石)とは時代がかぶっている。)
岩に苔が生えるのは、1ヶ月間
ここまで、
千代も、八千代も続くようにという3・24万年くらいの話と
小石が大きな岩になる2・3億年の話をしてきました。
最後になりますが、「苔のむすまで」です。
苔は、条件が整えば1ヶ月足らずで、生えてきます。
なんだか、かわいいように思えてきますね。
でも、苔が生える場所は、2億年以上前から形成され始めた巌の上ですから、並大抵のことではありません。
【追記】
静かな森の中を歩いていたとき、「巌に苔が生える」の解釈を考えていた。
みなさんご存じの通り、たくさんの岩があっても、そのすべてに苔が生えているわけではありません。
湿度が高い場所にある岩にしか苔は生えない。
そういう高湿度な環境に身を置くことができた岩や石にしか、苔は生えないのです。
たまたま、「数億年をかけて、小石から岩になれた石灰質角礫岩」が高湿度な環境に生成されれば、数ヶ月で苔が生えるかもしれない。
けれど、もし巌が生成された環境や気候時代が高湿度ではなかったら、環境が変わるのを待たなくてはいけない。
つまり、そのような高湿度な「環境」が形成されるのを待つ必要がある。
小石が岩になるまで数億年のときを経ても、その巌が形成された場所や時代が「高湿度な環境」であるとは限らない。
このように気候変動の可能性を「苔の生すまで」の1文から思いをはせると、
【単純に苔が生える】だけではなく、気候変動的な時間スケールで考えた方が詩の趣旨に合うかもしれない。
*地球という惑星は、10万年程度をひとつのスパンとして温暖化と寒冷化を繰り返していますので、これをひとつの参考にします。 https://www.jamstec.go.jp/sp2/column/03/
「小石が集まって大きな岩になる」という自然美を唄ったきれいな歌
ここまで、君が代の表現を見てきました。
君が代は
千代に八千代に =3万年や24万年 【人類スケール】
さざれ石の巌となりて =2~3億年 【地質スケール】
苔のむすまで =数ヶ月or10万年 【気候変動スケール】
君の時代が、どれほど長く栄えてほしいかがよくわかりました。
繰り返しになるが、
大きな岩が小石になることはイメージしやすく、そのような散り散りになる表現はよくある(ローリングストーン)。
その一方で、日本の国歌の、別れている小石が(人類からすれば)永遠にも似た長い年月を経て、ひとつの大きな岩になるという表現は、非常にうつくしい。
これは、日本人の自然美かもしれない。
輪廻転生を表しているのかもしれない。
はるか昔から、数世代昔も含め、
いまを生き、
そして、今を生きている自分さえも近いうちに過去になり、
ひとつの小石という存在になる。
けれども、そのような小石がたくさん合わさって、大きな巌となる。
わたしは巌になる瞬間を見ることはできないけど、ひとつの小石として、時を刻んでいこう。
(最後、ポエムみたいになった。)
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