「青年海外協力隊の虚像(著者1989年派遣)」を2016年派遣隊員が読み始めた:この暴露本らしきものは面白い!!
グラスにワインが半分ある状態を見て、「あー、あと半分しか残っていないや」と思う人と、「まだ、半分も残っているわ」と思う人がいる。
善いことを積極的に見つけることができる人と、悪いところばかりが気になってしまう人がいる。
物事はやはり「良いとされる側面」と「良くない(悪い)とされる側面」を知ることで、より立体的に見えてくると思う。
キザな表現をすれば、陰がなければ、我々の目は空間を認識することはできないのだ。
青年海外協力隊 OBの僕が最も簡単に人に貢献できそうなのは、『青年海外協力隊についての情報や実体験を、青年海外協力隊に興味がある人に伝授すること』だと思っている。
だから、2019年春募集が来週に近づいてきたこの時期に、冷静に「青年海外協力隊」について考えようと微々思った。
すると、一冊のおもしろそうな本を見つけた。
「青年海外協力隊の虚像」という本だ!!
この本はKindleで無料で購入できるので、人を待っているときに読み始めた。
書いてある内容は圧倒的に古く(著者ホンジュラス派遣1989年、発売日1997年)、僕が生まれる前の協力隊経験がもとになっている。
2019年の今、すでに30年前の話だ。
それを最近読み始め、まだ2章目に差し掛かった辺りまでしか読み進めることができていないけど、なんだかおもしろいので紹介しよう
画像表示できなかったので、リンクを貼っておきます↓
目次 Índice
情報を発信することは難しいけれど、発信された情報に噛み付くのは容易
本の内容を取り扱う前に、著者の石橋慶子さんに一定の敬意を払う。
まとまった文章を書くことは容易なことではない。
だから、情報を発信する側はかなりエネルギーを使う。消費する。
一方で、その情報を受け取る側は、筆者の労力には見合わないエネルギーで、その発信された情報についてしのごのいうことができる。
これは、当然と言えば当然のことだが、1987年当時の情報が、世紀をまたいだ2019年の今もあたかも「最新情報」のように思われてしまったら、それは読者をミスリードしているので圧倒的に腑に落ちない。
言い換えれば、青年海外協力隊についての生の情報はそれほど少ないととも言えるだろう。
一般的に1997年刊行の本を、2019年になっても手に取るなど、よっぽどの良本か革命的な本か、名作と呼ばれる小説くらいのものだろう。
論文であれば、どんどん引用され、その論文を糧に発展した内容を扱う論文が出る。
2000年をまたいでしまえば、2019年の今からすると、それは「情報が古すぎて、あてにならない」と感じるのが普通だろう。
率直な感想
「ここまでネガティヴな観点で物事を捉えている人もいるのか。。。。」
自分が持っていないものを理解することはできないので、彼女が真に常にそういう見方をしてきたのか、この本を執筆するにあたって「憎悪」に似た負のメンタリティのフィルターを通して執筆していたのかわからない。
もちろん、30年以上前の話なので、少なくとも2016年にコロンビアに派遣された僕とは、内容は全く合っていない。
僕は協力隊OBなので、協力隊事業の内部を見て、実際に2年間の任期を全うしているので、この本で扱っている「虚像」の虚像がわかる。
もう少し鋭い言い方をすれば、
彼女が扱っている内容(現在読み進めた1章まで)は圧倒的に個人の感情を拡大表現していて、当時の実情よりも過大にネガティヴな方に誘導している と思う。
だから、「虚像」の虚像。ウソの嘘。
青年海外協力隊の虚像 というタイトルは、「青年海外協力隊事業」を指しているのではなく、彼女の頭の中の「青年海外協力隊のイメージ(虚像)」を指しているのではないかと思うほどだ。
30年前の当時は本に書いてある内容が本当だったのかもしれないが、2016〜2018年派遣の僕がその情報を受け取ると、残念ながらとても嘘くさく感じる。
時代の流れとは恐ろしいものだ!
僕が書き連ねた記事も、20年もしたら「このおじさんは、変わった人だったんだわ」と思われているのだろう。。。
人や現実を受け入れる寛容性は、30年前も今も変わらないはず
青年海外協力隊の虚像を読み始めて感じたことは、「現実をどう捉えるかは、その人次第なのだな」ということ。
農家のマルガーリタの家に遊びに行ったエピソードでは、ホンジュラス人が豪語する内容と現実のギャップ(スペイン語話者の多くは大袈裟だ)を小馬鹿にしたような表現をしている。
確かに、僕もコロンビアにいた頃「よくこれでそれほど『幸せ』という言葉を連呼できるな〜」と思うことは多々あった。
我々日本人が慣れ親しんだ環境というのは、とても贅沢で、当たり前の幸せが蔓延しているからこそ、当の本人たちは「幸せ」が何かと理解できていないのだろう。
それに、この本を読んでいて面白かったのは、結局この人が大麻を1度吸ったことだ!
この本のなかの登場人物が、実名なのかそうではないのか知らないが、他の隊員が大麻を購入して吸っていた話を冷めた視点で非難するかたわら、彼女も大麻の味見をしたらしい。
おもしろい
あと、彼女の文章表現が、僕にはどうにも「青年海外協力隊の悪いところに焦点を当てて、暴露してやろう」というように見受けられる。
これは僕らのような協力隊経験者は「あああ、こういう変わった隊員もいるよね。だって、隊員はたくさんいるし、個性の多様性も大切だもの」と達観できるが、経験はないが興味関心があるひとたちに対して、この「ネガティヴなフィルターを通して書かれた文章」がどのように響くかはわからない。
協力隊隊員も人間なのだから、「清廉潔白な好青年」というイメージを抱くこと自体が変
協力隊に限った話ではなく、総理大臣も、店員さんも、議員さんも、大学の教授も、数億稼ぐ社長も、学生も、社会人も、皆同じ人間である。
頭で考え、行動する生物だ。
だから、どうすれば、「学校の先生をしている人は聖職者だ」とか、そういう先入観を勝手に抱けるのかがわからない。
(学校の先生を無碍に扱う意図はありません。)
トイレのスリッパを揃えない人もいるし、酔ってハメを外して訓練所の所長に怒られる人もいる。
男女の色恋沙汰に現を抜かす人も当然いるし、勉強を頑張っている人もいる。
その辺のコミュニティと変わらない。
こういうことを言うと元も子もないし、意地悪が過ぎるかもしれないが、
そもそも「青年海外協力隊に参加する人たちは清廉潔白な若者たち」と言う表現のなかに、著者自身も当然含まれていたと思うのだが、この本自身が清廉潔白ではないことを証明してしまっている。
そう言う矛盾がところどころ散りばめられている構成になっているので、スラスラと読めて、おもしろい!!
ここまでスラスラ面白く読める本は、ひさしぶりだ。
全部読み終えたら、体系的にこの本の内容を吟味して、最新バージョンに情報をアップデートします
ひとにいじわるするひと。
薬物に手を出すひと。
女性と関係を持つひと。
現地人の1ヶ月分の給料を半日で稼いでしまうことに罪悪感を抱くひと。
現地人が豪語することを”日本人的に”理解してしまい、勝手に「嘘をつかれた。期待を裏切られた」と被害者ぶってしまうひと。
いろいろな人間がいる。
そのなかで、自分が持っていない観点で過ごしている人の考えを聞くと、この本のように(読み物としては)とってもおもしろかったりする。
考え方や価値観は、教師にも反面教師にもすることができるから、いろいろな個性に触れることは大切なことだろう。
ただ、一緒にいると疲れる人がいたりするので、そういう時は本やネットでそれらの価値観にふれるとストレスフリーだろう。
講演会や報告会で良いことしか話さない(もしくは、話せないのかもしれないが)発表ほど退屈で眉唾なものはない と、僕も思う。
でも、うまくいった活動が紹介されやすいことも、協力隊員が「2年間でこの程度成功事例があれば、万々歳だろう」という実体験に基づく判断から少しの成功を大きく報告する理由もよくわかる。
日本で取り組むのと、途上国で取り組むのでは、違うのだ。
でも、会場にいる人たちに「日本とは違う」と一言付け加えたところで、その人たちは何がどのくらいどう違うのかを想像して理解することは不可能だろう。
それが理解できているのであれば、協力隊の説明会などには参加するはずがない。
だから、結局協力隊経験者とそうではない人たちの認識は、平行線をたどるのだ。
そして、中身が不透明になりがちな協力隊事業の中身を、内部告発的に暴露したくなるのだろう。
この類の過激な暴露本には一定数の賛同者が現れる。その勇気を讃えたく、さらに、自分が持っている協力隊事業への懐疑心を内部者があと推してしてくれるのだから。
ということは、こういう暴露本は一定の価値がある。
なぜなら、良いことを言う人ばかりで、悪く言う人がごくわずかだからだ。
みんながAと言うところを、Bに行く。
Bにいってくれる人がいるから、多様性が生まれ、選択肢が増える。
協力隊員はそのような多様性をとても重んじる。いろいろな個性の人がいるから、多様性を受け入れる素養が育つのだろう。
だから、「青年海外協力隊の虚像」という本を読んでいても、笑いながら読めるだけで、「こういう人もいるよな〜〜」で終わる。
いずれにしても、「青年海外協力隊の虚像」は2019年現在内容は全く参考にならないが、読み物としてはおもしろいので一読あれ!
kindleで無料です!!
特に、協力隊経験者の人が読むと、なおのことおもしろいと思います!
それでは、読み終えたら、きちんと内容がある形で、まとめていこうと思います。
協力隊の2019年春募集は2月13日〜ですよ!!!!
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