微生物を扱う隊員へ:EM菌という疑似科学とミミズの有用性
たまには、専門である農業分野の記事を書いてみよう。
目次 Índice
人によっては、良い微生物と悪い微生物の区別がつくらしい
コロンビアでもよく耳にするEM菌。
日本でも一時期流行ったし、いまも信じている人はいる。
EM菌というのは、「Effective Microorganisms EM = 有用微生物群」である。
我々人間はどれほど視力が良くても、基本的に微生物を目視で見ることはできない。それこそ、キノコやカビのように”集合体”で大きくなっていれば話は別だ。また、森林の落ち葉をめくったとき、菌糸を見つけることができるが、これは言うならば”大きな集合体の微生物”である。
ときどき、「良い微生物」、「悪い微生物」と言う人がいる。
きっと我々にベネフィットをもたらしてくれる微生物を「良い微生物」と呼んでいるのだろう。
一方で、カビのような汚いイメージのものは、「悪い微生物」だろうか。
コロンビアにも、この科学的ではない考え方がはびこっている。
記事を長くしたくないので短くしよう。
結論から言うと、EM菌は疑似科学である。
というか、良い微生物ってなに????
このビジネス、基本的に微生物群はブラックボックスである。
なぜなら、「それを教えたら真似されてしまうから」といって公開しないからだ。さらに言えば、EM菌というのは商標名である。『雑草』みたいなものだ。みんな雑草、雑草と呼ぶが、実際はそのなかにはたくさんの種類の植物がいる。それを総称して、雑草と呼んでいるのだ。
だから、微生物を売るのであれば、総称であやふやにして販売するのではなく、効果があるという特定の微生物の名前をうたうべきなのだ。
たとえば、特定の微生物は植物の根っこに共生して、植物のリン吸収・利用能力を高めてくれる。この微生物は、アーバスキュラー菌根菌と言う。これ、コロンビアでも売ってる。土壌中に普通にいるのだが存在する濃度が薄いので、この菌根菌を多く含んだ「アーバスキュラー菌根菌のタネ」でも言おうか、それを販売している。一緒に働いている農業技師もそれを薦めていたりする。このように、人間にとって有益な微生物がいて、それを販売しようとするのであれば、その「効くとされる特定の微生物名」を明記するべきなのだ。
だから、何の微生物が、どのような構成でどのくらいいるのかわからないEM菌という総称を信頼してはならない。
さらに言えば、微生物の構成を完全にコントロールすることができるはずがないのだ。
本当にひとつの微生物をポンッと、液体のなかに入れてそれを農家さんが使うことができるだろうか?
できたとして、それが土壌に撒かれたときに、その微生物が役に立つ可能性はどれほどなのだろうか?土壌中の微生物の量を侮ってはいけない。
撒いたそのEM菌がいるとされる液体は、購入したときと同じ微生物の構成なのだろうか?ほかの微生物が入ってきてしまって、微生物層が変わってしまっている可能性はないのか。コンタミネーションだ。
では、それをどのようにして確かめればいいのだろうか?
もう一度言おう。微生物は目で見ることはできない。
「EM菌をまいたら作物が大きく育ったぞ!効いているじゃないか!!」と言うが、そのEM菌という微生物が効いたかどうかをどのようにして検証するのだ。その微生物は企業秘密として、何だか公表していないのですぞ??
これ、プラシーボ効果と同じだ。
医者から「これ効く薬だから」と渡された、ただのフリスクを飲んだら「良くなった気がする」のだ。
このフリスクはまだプラシーボ効果ということで検証されているからいい。
全くコントロールすることもできない、ブラックボックスの、組成も構成もわからない微生物群が入っている”らしい”ものを信じて使い続ける。
これは妄信的だ。
自分で繁殖させた気になって、使い続けるのならまだ問題ない。(正しく特定の微生物を繁殖することは、農家レベルの設備では無理だと思うが)
これを毎回買い続けるパターンに陥ってると、最悪だ。
内容証明のない微生物群を毎回お金を払って買うのだから。
EM菌という名のただの液体肥料(栄養剤)を作物に撒けば、その作物は良く育つのだ。養分が与えられたのだから。
もしかしたら、良い微生物というのがいるかもしれない。でも目に見えない。その商品の品質はどのように保証される?
このサイトの信憑性はわからないが、第3者の意見が知りたい人は読んでみると良いかもしれない
クリックで飛びます→ EM菌 | 疑似科学とされるものの科学性評定サイト
目に見えるミミズなら管理は簡単。だって、ウソはつけないし、何が起きているのかも見えるからね
だから、ぼくは配属先でも、
「そういう目に見えないものを信じて出費を増やすくらいなら、ミミズコンポストのほうが管理が簡単だし、ミミズは微生物と共生しているから微生物もめちゃくちゃたくさんいるんよ。「良い微生物」がほしいなら、ミミズ堆肥をタネとして使えばいいし、コンポストティーは微生物が多いから、薄めて葉面散布すれば微生物の多様性を高めて病原菌の発生を予防できるよ。」
と言っている。
実際、ミミズコンポストから滴るコンポストティーは、非常に優れた病原菌管理剤である。
ミミズ堆肥は、言わずもがな歴史上最も優れた有機肥料である。
しかも、ミミズは目に見えるし、ゴミを入れたり、牛糞を投入すれば勝手にミミズちゃんたちが働いて、有機肥料にしてくれるときた。
なんて簡単なのだろう。
我々はミミズが活動しやすい環境を整えるだけで、毎日温度を測る必要もないし、1カ月に一度ひっくり返す必要もない。
肥料を使いたいときに、使いたい分だけ自由に収穫できる。ゴミも毎日追加的に投入することができるから、リサイクルもしやすいし、生ごみから腐臭がすることもない。
ミミズの生き方を理解すれば、サイズはペットボトルサイズの小さいモノから、大きな工場まで様々な飼い方ができる。
そして、微生物のみの堆肥よりも、ミミズのほうが圧倒的に体サイズが大きいので、処理能力もその分圧倒的に高い。
500gのミミズを飼っていたら、500gほどの有機ごみを、理論的には毎日最も優れた有機肥料にしてくれる。(実際は250gだろう。コンディションによっては、2倍の1kgまでは処理してくれる可能性がある)
有機肥料と言っても、ミミズ堆肥と言う固形の有機肥料と、ミミズコンポストの下からにじんでくる液体状のコンポストティーという液体肥料の2つを作り出してくれる。
この液体肥料なのに、有機肥料であるコンポストティーがとても農家さんの食いつきが良いのだ。
なんせ、有機肥料の弱点である「速効性の肥効」を持っているからだ。
有機農業を目指そうとすると、どうしても科学的に最も正しい土壌管理をしても、土壌を改良するまでには5年くらいかかる。それまでの変更期間を支える速効性のある有機肥料というのは、とても貴重な存在であり、便利なのだ。しかも、その液体肥料は微生物が多く、植物の生長を促進すると言われている植物ホルモンを含んでいるのだ(植物ホルモンについては今もその働きが研究され続けている)。
ぼくが妄信的になっているだけかもしれないが、ミミズコンポストに欠点はない。
何千年もの間地球を耕してきた生物だからだ!!
その生物学的なプロセスに沿って行われたことは、生態学的な循環の一部として合っているのだ。
ミミズは英語では、EARTHWORMという地球の虫だ。スペイン語ではLombriz de tierra、地球のイモムシだ。「地球」という冠が名前に入っている生物はそう多くはないだろう。それだけ、地球で重要な生物であるということだ。
ちなみに、進化論で有名なチャールズダーウィンは、没年まで数十年間のあいだ、イギリスの自宅前でずっとミミズの研究をしていた。
家庭たい肥製造機のような機械があるが、結局コンセントに刺すなら、それは電気を消費し、エネルギーを消費しているのだ。環境に優しいことしているのか、環境に優しそうなことをしているという自己満足に浸りたいのかわからない。だったら、その辺の土に穴を掘って埋めたほうが環境にやさしい。
目に見えるから教えやすいし、納得してもらいやすい。だから、普及もしやすい
配属先でEM菌の話があがったので、たまには農業関係の記事も書きたいなと思って書きました。
結局、最終的にはミミズコンポストの話になってしまいました。
でも、途上国では、目に見えないもの(微生物)を教えるのは難しいし、目に見えないものを適切に管理してもらうのは困難だと思う。そういうとき、ミミズコンポストは便利だ。だって目に見えるし、ミミズちゃんたち自身が微生物群をコントロールしてくれるから、ただミミズを管理すればいいだけ。しかも、きちんとした環境を作っておけば、ミミズは放っておいても繁殖するし、それでいてゴミをリサイクルして最も優れた有機肥料をつくってくれる。
面倒くさがりなひとたちにこそ、ミミズコンポストを勧めるべき。
「最も優れた有機肥料」という出口があるから、ゴミのリサイクルも率先してやるようになる。やっぱり、リサイクルリサイクル言っても、そのリサイクル行為が何かメリットをもたらさないとやりたがらないんだよね。だから、「有機肥料のために、家から出るゴミをミミズに与えよう」というのは、各家庭で完結できるサイクルが生まれるので、そこからビニール袋の分別とかに話をすすめやすかったりする。
「自然栽培の科学的根拠」や「土壌を耕すことは人類史の大きな間違いであり、土壌を悪くしている」ということなどのテーマは帰国後にゆっくりと科学的に説明していきたいと思う。
農地を耕すってことは、農地の持続性を損なうことだから、みなさん気を付けてね!!
Chao
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